フィリピンNGO 澤村氏のインタビュー

11月13日、明治大学にフィリピンミンダナオ島の孤児院「ハウスオブジョイ」を運営されている澤村信哉さんがお越し下さいました。 澤村さんが私たちにお話しして下さった、ハウスオブジョイの活動内容そして澤村さんの熱い思いを紹介させていただきます.

☆ハウスオブジョイとは・・・
澤村さんは、まず私たちにご自身が運営されているハウスオブジョイ(HOJ)を紹介して下さいました。HOJは、自然が豊かなフィリピン南部に位置するミンダナオ島にあり、3歳から18歳までの孤児を預かり、衣食住の保障・学校へ行かせるサポートをしています。孤児と聞くとかわいそうな子供たちを連想しまいがちですが、澤村さんはこのようなことをおっしゃっていました。

ハウスオブジョイは、自分の子供時代を楽しかった!と言える環境を作りを目標としています。幼少時代の楽しい思い出が、きっと貧困を解決する手助けになる。

フィリピンで孤児が生まれてしまう理由は、親と生活ができなくなった、災害で家や家族を失った、などさまざまです。ハウスオブジョイにやってくる子供たちも、来たばかりは塞ぎ込んでしまう過去を抱えていることが多いそうです。そんな悲惨な状況にあった子供たちに笑顔を取り戻す、これもハウスオブジョイの大きな使命です。

さて、そのハウスオブジョイはどのように設立されたのでしょう?

澤村さんは、ご自身のお話の前に、HOJの創立者である烏山逸雄さんについて紹介して下さいました。

☆烏山逸雄さんとは・・・
HOJの創立者である烏山さんは、大学卒業後に青年海外協力隊として、フィリピンに渡り農業指導をしていました。日本に帰国後、商社マンとして活躍し、海外での調査・接客を経て経済的に安定した生活を送っていました。しかし、贅沢な暮らしにやりがいを感じることはできず、以前訪れたフィリピンでの生活困難な中で必死に生きる子供たちに何かできないかという熱い想いにより、ハウスオブジョイを創設しました。商社マンとして稼いできたお金や、日本での募金活動で集まったお金を運営資金に回しました。様々な壁にも立ち向かい、充実した生活を迎えると同時に烏山さんは脳梗塞で倒れてしまい、下半身を自由に動かすことが困難となり、HOJの運営や日本でHOJに関する講演会を開くことが難しくなったのです。このとき、烏山さんは澤村さんにHOJの手助けを依頼しました。

☆澤村さんと烏山さんの出会い
切実な依頼を受けた澤村さんは、どのようにして烏山さんと出会ったのか、ご自身の経験を踏まえたうえで教えて下さいました。澤村さんは、大学生のときに初めてフィリピンのミンダナオ島をボランティア活動として訪れ、フィリピンの若者と農作業をしました。翌年大学2年生のころに再びミンダナオ島を訪れ、孤児院を運営している烏山さんと出会いました。澤村さんは大学卒業後、現地採用としてミンダナオ島で日本語教師として雇われました。7年間ミンダナオ島で働いた後、ブルガリアで日本語教師の求人があることを知り、今まで生活してきた暑い国とは真逆の寒い国へ行ってみたいという思いから東ヨーロッパに位置するブルガリアへ渡ったのです。ブルガリアでの充実した生活が2年経ったころ、烏山さんの病状を知りHOJ運営に関する切実な依頼を受けました。澤村さんはその願いを引き受け、沢山のことを学び経験してきたフィリピンの地で恩返しをしたいと思ったのです。これをきっかけに、澤村さんのHOJ運営は始まりました。

☆澤村さんにとっての音楽
澤村さんは今回の講演で大きなトランクを持ってきていました。お話しをして下さっている際にも、そのトランクは足元にありました。そのトランクの中身がここからのお話しで明かされます。大学時代にボランティア活動としてフィリピンを訪れた際に、ギターを弾きこなすフィリピン人の友達ができたという澤村さん。それ以来、各国の音楽に興味を持ち始めたそうです。その楽器の演奏方法、その国のこと、を調べていく過程が、澤村さんと世界をつなげていきました。このことに関して、澤村さんは、「音楽は世界を広げるツール」とおっしゃっていました。音楽との出会いをくれたフィリピンに対して、何か恩返しがしたいという熱い思いに駆られ、大学卒業後に現地採用としてフィリピンで日本語教師を七年間務めました。低賃金であり、仕事を続けるのも決して楽なものではありませんでした。しかし、やりたい仕事を続ける後押しとなったものが、副収入源である音楽と絵だったのです。フィリピンの街の中で音楽のパーフォーマンスや似顔絵スケッチをすることでお金を稼ぐことができたと言います。実際に足元にあったトランクから数々の楽器を取り出し、演奏して下さりました!その澤村さんを支えていた音楽は、現在HOJの子供たちの心の支えにもなっています。 HOJは、自然が豊かなミンダナオ島にある為、その自然を利用して、澤村さんは子供たちと手作りの楽器を作っています。例えば、竹を用いて楽器を作り、竹音楽隊を結成しました。澤村さんの見せてくれたビデオには、子供たちの楽器作りに熱心な姿や生き生きとした表情が覗えました。

☆HOJの運営スタイルとは・・・
澤村さんは、HOJのモットーは楽しいだと言います。これは、HOJで生活している子供たちは勿論、運営側そしてボランティア活動に参加する方にも当てはまる概念です。ボランティア活動の様子をビデオで拝見しましたが、大自然に囲まれたミンダナオ島で、笑顔が眩しい子供そしてその周りには子供と区別がつかない程はしゃいでいるボランティアの方々が映っていました。また、澤村さんは運営資金を集める手段も“たのしいもの”に変えてしまうのです。例えば、子供たちと竹音楽隊を結成し、その音楽がレコーディングされたDVDを販売することで運営資金を集めることができました。また、子供たちの作った楽器はよく目にする楽器とは異なり独特な音を奏でることから、楽器を購入する人も多く、そこでの収入も運営資金に回っています。実際、澤村さんの持ってきて下さった竹の笛(竹サックス)は、一見細い縦笛のように見えましたが、その奏でる音は見た目からは想像できないクラリネットやサックスのような低音で、明治学生もみな驚きました!

それ以外にも、毎年、澤村さんは夏に八ヶ岳清里萌木の村にて演奏、似顔絵を人々に提供しそこからも資金を得ています。READYFORやamazonにHOJを掲載し、インターネットを通して、若い世代の人の間にも関心を広げています。

HOJは単なるNGO団体にとどまりません。この施設自体が宿泊施設となっているため、HOJに遊びに行けば、子供たちと触れ合ったり、近くの海に遊びに行けたりと、存分に楽しんだうえに、宿泊料がHOJの支援金にもなるのです。


私たち明治学生は、澤村さんの講演後にお時間を頂き、対話することができました。その質疑応答を紹介します。

☆明治学生が澤村さんに聞きたいこと

(学生)卒業後の子供たちは何をしていますか?

(澤村さん)  HOJに携わるスタッフは子供たちの就職活動をサポートしています。卒業した子供たちは、子供時代に自分の環境を取り巻く職業(先生・漁師・警察など)に憧れを抱き、そのような職種を選択し田舎で暮らす人が多いです。中には、大学に進学して日本語を専攻する学生もいます。

(学生) フィリピンの政府は、貧困対策を積極的にしていますか?

(澤村さん) 今のフィリピンの政治体制では、難しいのが現状です。政府自体が不安定であり、なかなか資金援助にまわすお金がありません。私自身が政府に貧困対策に関して口を出すことは過度な干渉であり、国の発展の中でまずはフィリピンの人たちが貧困対策に取り組む必要があると思っています。

(学生) 今まで接することが難しかった子供はいますか?また、辛かった経験は何ですか?

(澤村さん) フィリピンの別の地域から受け入れた子供は、HOJスタッフが理解できない言語であり、初めは意思疎通が難しかったです。しかし、スポーツや音楽、他の子供たちとの交流を通して、言語の壁を乗り越え、今では楽しく生活をしています。辛かったことに関しては、時々子供たちが家出をしてしまうこと。食器を割ってしまった、お手伝いを忘れてしまったという小さな理由により家出をしますが、これは過去にこんな小さな理由でも罰として虐待を受け、その記憶がフラッシュバックすることで恐怖のあまり家出をするのです。信頼関係を築く難しさに直面します。

(学生) HOJの創設者である烏山さんから受け継ぎ大切にしている伝統、また澤村さん自身が新しく大事にしていることは何ですか?

(澤村さん)  楽しい施設であることは重視しています。オープンな環境を目指し、多くの人が遊びに来れる空間を提供することも大切。また、烏山さんが築いてきた人脈を守ることも大事だと思っています。新たな視点としては、HOJに音楽を導入したこと。また、烏山さんの頃の支援層は高齢の方が多かった為、その支援層をウェブなどを使って若い人にも広めることです。

(学生) これから、さらに挑戦したいことはありますか?

(澤村さん) まずは、正式に烏山さんからHOJの運営を引き継ぎ、Ready For(インターネットを介して不特定多数の個人から資金(支援金)を集めるサービス)などから資金を調達し、日本さらにはミャンマーでも竹の音楽隊を設立することです。 *以上の澤村さんの文は、澤村さんの答えを省略させていただいたものです。


講演の最後に澤村さんはこのようなことをおっしゃっていました。

HOJに来る子供の中には、半年経っても笑わなかったり、心を開かなくて泣きもしない子供がいます。しかし、HOJの子供たちが笑顔を引き出してくれるんですよね。海外で孤児院をやっていて偉いね、自分を犠牲にしているね・・・と思われがちだけど、それは違う!自分は好きでHOJの子供たちと関わっているのです。

澤村さんの貴重なお話しを、皆さんはどのように受け止めましたか?